仮想通貨取引所が破綻・倒産したら資産はどうなる?分別管理とは

会社が倒産したら、借金の返済に僕の資産も使われちゃうの?
顧客の資産は会社の財産と分けるので、原則として返済には回りません。
仮想通貨(暗号資産)の取引所が破綻・倒産したとき、預けている資産がどうなるかは「その取引所がどんなルールで資産を管理しているか」で決まります。
日本で金融庁に登録している暗号資産交換業者は、資金決済法によって顧客の資産を守る仕組みを義務付けられています。
その中心にあるのが「分別管理」という考え方です。
分別管理とは会社の財産と顧客の資産を分けて持つこと
分別管理とは、取引所が自分の会社のお金や暗号資産と、利用者から預かったお金や暗号資産をはっきり分けて管理することです。
もし分けずにまとめて持っていると、会社が経営に失敗したとき、顧客の資産まで会社の借金の返済に使われてしまうおそれがあります。
分けて持っていれば、会社が破産しても顧客の資産は会社の財産に含まれないため、原則として利用者に返すことができます。
さらに取引所は、分別管理がきちんとできているかについて、公認会計士や監査法人のチェックを毎年受けることも求められています。
日本円は信託、暗号資産はコールドウォレットで守られる
分別管理のやり方は、日本円と暗号資産で違います。
| 預けたもの | 管理のしかた | 破綻したとき |
|---|---|---|
| 日本円 | 信託銀行などに金銭信託する | 信託先から利用者に返される |
| 暗号資産(95%以上) | ネットから切り離したコールドウォレットなどで保管 | 顧客の資産として返還の対象 |
| 暗号資産(5%以下) | 入出金用のホットウォレットで保管 | 同じ種類・同じ量の「履行保証暗号資産」で備える |
日本円は、取引所の口座ではなく信託銀行などに預けられているため、取引所の会社が倒産しても信託財産として守られます。
暗号資産は、顧客分の全体のうち5%を超えてネットにつながった場所に置けない決まりです。
残りの95%以上は、インターネットから切り離したコールドウォレットなどで保管するよう求められています。
ホットウォレットの分は同じ量の暗号資産で備えている
入出金をすぐ処理するために、取引所は一部の暗号資産をネットにつながったホットウォレットに置いています。
この部分はハッキングで流出するリスクがあるため、取引所は同じ種類・同じ数量の暗号資産を「履行保証暗号資産」として自分で持っておく義務があります。
たとえばホットウォレットに顧客のビットコインが10BTCあれば、取引所は自分の財産として別に10BTCを用意しておくイメージです。
もし流出しても、この備えから利用者に返せるようにするための仕組みです。
破綻したら顧客は他の債権者より先に返してもらえる
2020年に施行された改正資金決済法では、利用者が預けた暗号資産について、他の債権者より優先して返してもらえる権利(優先弁済権)も定められました。
会社が破産すると、銀行や取引先など多くの債権者がお金を返してほしいと主張します。
その中で利用者の暗号資産は先に返す対象になるので、取引先への支払いと取り合いにならない点が大きな違いです。
国内取引所で資産を守る3つの仕組み
- 分別管理:会社の財産と顧客の資産を分ける
- 履行保証暗号資産:ホットウォレット分と同じ量を別に持つ
- 優先弁済権:破綻時に顧客が先に返してもらえる
FTX破綻の概要とFTX Japanの顧客資産が戻った理由

FTXって世界的な取引所だったのに、日本の利用者はどうなったの?
日本法人は分別管理をしていたので、約3か月後に出金できました。
分別管理が実際にどう働いたのかが分かる例が、2022年11月に起きたFTXの破綻です。
ここでは、FTX破綻の概要と日本の利用者への影響を整理します。
2022年11月に起きたFTX破綻の概要
FTXは、2019年にサム・バンクマン=フリード氏が創業した海外の暗号資産取引所で、一時は世界有数の規模に成長していました。
2022年11月、創業者が関わる投資会社アラメダ・リサーチの財務への疑問が報じられたことをきっかけに、利用者の出金が一気に集中します。
その後、顧客から預かった資金がアラメダ・リサーチに流用されていたことが明らかになり、FTXは2022年11月11日に米国で破産法の適用を申請しました。
顧客の資金と会社の資金が分けられていなかったことが、破綻の大きな原因です。
創業者はのちに詐欺などの罪で有罪となり、2024年3月に禁錮25年の判決を受けています。
FTX Japanは業務停止となったが出金は再開された
FTXグループの日本法人だったFTX Japanは、日本の暗号資産交換業者として金融庁に登録していました。
親会社の混乱を受けて金融庁から業務停止命令が出され、利用者は一時的に出金できなくなります。
しかし、FTX Japanは日本円を信託口座で、暗号資産をコールドウォレットで分別管理していました。
さらに親会社側の代理人も、FTX Japanが預かる顧客資産は米国の破産手続きの対象に含まれないとの見解を示しました。
その結果、2023年2月21日に出金が再開され、報道によれば約1週間で5,400名以上の利用者に約96億9,000万円分の出金が処理されています。
海外のFTX本体の利用者が長く資産を引き出せなかったのに対し、日本の利用者は約3か月で資産を取り戻せたのです。
FTX破綻が暗号資産市場に与えた影響
FTXの破綻は、暗号資産市場全体にも大きな影響を与えました。
ビットコインの価格は破綻前後に急落し、一時1万6,000ドルを下回る水準まで下がっています。
FTXと取引のあった他の暗号資産関連企業にも連鎖的な経営悪化が広がり、業界全体の信用が揺らぎました。
日本では、この経験から「海外に拠点を置く業者が破綻すると、顧客資産が海外に流れてしまうおそれがある」という課題が見えました。
これを受けて2025年には、金融庁が交換業者に資産を国内で持つよう命じられる仕組みを設ける資金決済法の改正も行われています。
FTXの例から分かるのは「どこの法律で守られるか」の違い
同じFTXグループでも、海外の本体と日本法人では利用者の結果が大きく分かれました。
違いを生んだのは会社の規模ではなく、日本の資金決済法にもとづく分別管理が義務付けられていたかどうかです。
つまり、取引所を選ぶときは知名度や手数料だけでなく、どの国のルールで資産が管理されているかを見る必要があります。
日本に住む人が初めて口座を作るなら、金融庁に登録した国内取引所を選ぶことが、破綻リスクへの一番の備えになります。
過去の取引所の破綻・流出事件から学ぶこと

FTX以外にも、取引所でお金がなくなった事件ってあったの?
ありますが、事件のたびにルールが厳しくなっています。
日本の暗号資産取引所でも、過去に破綻や大きな流出事件が起きています。
ただし、事件の時期によって利用者への影響は大きく違います。
| 時期 | 出来事 | 利用者への影響 |
|---|---|---|
| 2014年2月 | マウントゴックスが約85万BTCを失い破綻 | 返済は2024年にようやく本格化 |
| 2018年1月 | CoincheckからNEM約580億円相当が流出 | 約26万人に日本円で約460億円を補償 |
| 2024年5月 | DMM Bitcoinから4,502.9BTC(約482億円相当)が流出 | グループの支援で全額補償し、口座はSBI VCトレードへ移管 |
規制前のマウントゴックスは返済に10年かかった
2014年に破綻したマウントゴックスは、当時世界最大級のビットコイン取引所でした。
この頃は暗号資産を取り扱う業者への法規制がなく、分別管理のルールもありませんでした。
そのため、顧客のビットコインがどこにどれだけ残っているのかを確かめるだけでも長い時間がかかり、返済が本格的に始まったのは約10年後の2024年です。
流出事件のたびに資産を守るルールが強化された
マウントゴックスの破綻を受けて、2017年4月に改正資金決済法が施行され、暗号資産交換業者は金融庁への登録が必要になりました。
2018年のCoincheckの流出事件では、顧客のNEMがホットウォレットに置かれていたことが問題になりました。
Coincheckは自己資金で約26万人に日本円での補償を行い、その後マネックスグループの傘下に入って経営体制を立て直しています。
この事件などを受けて、2020年5月の改正で、コールドウォレットでの管理や履行保証暗号資産の義務が法律に盛り込まれました。
DMM Bitcoinは廃業しても顧客資産は引き継がれた
2024年5月にはDMM Bitcoinから大量のビットコインが不正に流出しました。
DMM Bitcoinはグループ会社からの資金で流出分と同じ量のビットコインを調達し、全額を補償すると発表しています。
その後、同社は廃業を決め、2025年3月に顧客の口座と日本円・現物の暗号資産をSBI VCトレードへ移す手続きを進めました。
このように、近年の国内の事件では利用者の資産が守られる形で決着しています。
一方で、移管までの間は新規の買い注文ができないなど、利用者は数か月間思うように取引できない状態が続きました。
分別管理されていても資産が戻らないリスクがある場合

分別管理があれば、どんな預け方でも絶対に安心なの?
いいえ、貸した暗号資産や海外業者の資産は守られにくいです。
分別管理は強い仕組みですが、すべての資産やすべての状況を守ってくれるわけではありません。
ここでは、取引所が破綻したときに資産が戻らない、または戻るまでに時間がかかる場合を整理します。
貸暗号資産は分別管理の対象外になる
取引所に暗号資産を貸し出して利息を受け取る「貸暗号資産(レンディング)」は、預けているのではなく取引所に貸している扱いになります。
そのため、GMOコインやOKJの公式サイトでも、貸暗号資産は分別管理の対象外であり、破綻したときに返ってこないおそれがあると明記されています。
利率が高いサービスほど魅力的に見えますが、破綻時は返還の優先順位が下がる点は覚えておきましょう。
貸し出すなら、なくなっても生活に困らない金額にとどめるのが安心です。
海外取引所や無登録業者には日本の保護が届かない
分別管理や優先弁済権は、日本の資金決済法で登録した業者に対するルールです。
金融庁に登録していない海外取引所に預けた資産は、日本の法律による保護の外にあります。
FTX本体の利用者が長く資産を引き出せなかったのも、日本のルールが届かない海外の会社だったためです。
さらに海外取引所は、日本からのサービス提供をやめることもあります。
たとえばBybitは日本居住者向けのサービスを終了し、2026年7月22日が強制決済の最終期限とされていました。
日本居住者を主な顧客にしていない海外業者に大きな資産を置くことは、破綻以外の面でもリスクがあるといえます。
返還まで時間がかかり、その間の値動きは補償されない
分別管理で資産が守られても、返ってくるまでには時間がかかることがあります。
FTX Japanのケースでは、業務停止から出金再開まで約3か月かかりました。
その間に暗号資産の価格が下がっても、返ってくるのは原則として預けた数量であり、値下がり分は補償されません。
売りたいタイミングで売れないこと自体が、取引所が破綻したときの大きなリスクです。
預金保険や投資者保護基金の対象にはならない
銀行預金は預金保険制度で1,000万円とその利息まで守られ、証券会社の場合は投資者保護基金という仕組みがあります。
しかし、暗号資産取引所に預けた資産は、これらの制度の対象ではありません。
暗号資産を守るのは、あくまで取引所ごとの分別管理と法律上の優先弁済権です。
だからこそ、どの取引所に預けるかの判断がとても大切になります。
「取引所に預けていれば銀行と同じように国が守ってくれる」と考えている人は、ここで認識を改めておきましょう。
レバレッジ取引の建玉は決済を求められることがある
取引所が業務を止めたり別の会社へ引き継がれたりするとき、レバレッジ取引で持っている建玉(未決済のポジション)はそのまま移らないことがあります。
DMM Bitcoinの移管では、引き継がれたのは日本円と現物の暗号資産で、レバレッジ取引の未決済ポジションは対象外とされ、事前に決済する必要がありました。
自分の好きなタイミングではなく、決められた期限までに損が出ていても決済しなければならないことがあります。
レバレッジ取引をするなら、証拠金は必要な分だけ入れ、残りは現物や日本円で持っておくと影響を抑えられます。
分別管理でも守られにくいケース
- 貸暗号資産(レンディング)で貸し出している暗号資産
- 金融庁に登録していない海外取引所に預けた資産
- 返還を待つ間の値下がりによる損失
- 期限までに決済を求められるレバレッジ取引の建玉
破綻リスクに備える取引所の選び方と資産の守り方

じゃあ、破綻が心配な僕はどうやって取引所を選べばいいの?
金融庁の登録と、資産の預け方をセットで考えましょう。
取引所の破綻を完全に避ける方法はありませんが、選び方と預け方を工夫すれば、影響を小さくすることはできます。
どれも口座を作る前後に数分で確かめられるものばかりなので、難しく考える必要はありません。
ここでは、初心者でもすぐにできる対策を重要度の高い順に紹介します。
金融庁に登録された国内取引所を選ぶ重要度:★★★★★
まず確認したいのは、その取引所が金融庁の「暗号資産交換業者登録一覧」に載っているかどうかです。
登録業者であれば、分別管理・コールドウォレット・優先弁済権といった日本のルールがすべて当てはまります。
たとえばCoincheckは関東財務局長 第00014号、bitFlyerは関東財務局長 第00003号として登録されています。
登録番号のない業者には預けないことが、最も確実な破綻対策です。
分別管理の方法と監査結果を公開しているか見る重要度:★★★★☆
国内の登録業者の多くは、公式サイトで分別管理の方法やコールドウォレットの割合、信託先の銀行名などを公開しています。
あわせて、財務諸表や外部監査の結果を開示しているかも確認しておきましょう。
情報をきちんと出している取引所ほど、経営の状況を外から確かめやすく、万一のときの対応も見通しやすくなります。
経営が安定した大手グループの取引所を使う重要度:★★★★☆
流出事件が起きたとき、全額補償できるかどうかは会社やグループの資金力に左右されます。
Coincheckの2018年の流出事件やDMM Bitcoinの2024年の流出事件でも、補償の原資は会社やグループの資金でした。
上場企業グループに属しているか、長く運営を続けているかは、取引所の経営の安定度を見るひとつの目安になります。
口座を複数持って資産を分けて置く重要度:★★★☆☆
1つの取引所にすべての資産を置くと、その取引所が止まったときに何もできなくなります。
口座を2つ持っておけば、片方が業務停止になっても、もう片方で売買や入出金を続けられます。
DMM Bitcoinの移管のように数か月取引できない期間が生まれても、別の口座があれば相場の急変に対応できます。
使わない資産は取引所に置きっぱなしにしない重要度:★★★☆☆
しばらく売買しない日本円は、取引所から自分の銀行口座へ出金しておくのもひとつの方法です。
出金には手数料がかかる取引所もあるので、回数をまとめて負担を抑えましょう。
暗号資産を自分で管理するウォレットに移す方法もありますが、秘密鍵をなくすと二度と取り戻せないため、初心者はまず登録業者の分別管理を頼るほうが安全です。
残高と取引履歴を手元に記録しておく重要度:★★☆☆☆
取引所が破綻すると、返還の手続きでは取引所の記録をもとに利用者ごとの残高が確かめられます。
FTX Japanも、出金再開までに最も苦労したのはシステムから利用者のデータを取り出し、正しいかを確かめる作業だったと説明しています。
自分でも残高の画面や取引履歴を定期的に保存しておけば、返ってきた数量が正しいかを照らし合わせられます。
取引履歴は確定申告で利益を計算するときにも必要になるので、年に1回はまとめてダウンロードしておくと安心です。
破綻に備えるチェックリスト
- 金融庁の登録一覧に載っている取引所を選ぶ
- 分別管理と監査の情報を公式サイトで確認する
- 口座を2つ持って資産を分けて置く
- 貸暗号資産は余裕資金の範囲にとどめる
よくある質問
仮想通貨取引所が潰れたら、預けた日本円はどうなりますか?
国内の登録業者は、利用者の日本円を信託銀行などに金銭信託して分別管理しています。取引所が倒産しても信託財産として守られ、原則として利用者に返されます。
取引所が破綻したら、預けたビットコインは日本円で返ってきますか?
分別管理された暗号資産は、原則として預けた暗号資産そのものが返還の対象です。ただし、DMM Bitcoinの移管のように別の取引所へ引き継がれる形になる場合もあり、扱いは個別の手続きによって変わります。
分別管理されていれば、ハッキングで流出しても資産は戻りますか?
ホットウォレットの分については、取引所が同じ種類・同じ量の履行保証暗号資産を持つ義務があるため、そこから返す備えがあります。ただし流出額がこれを超えた場合は、会社やグループの資金で補償できるかに左右されます。
FTX Japanの利用者は資産を全額取り戻せましたか?
FTX Japanは顧客資産を分別管理しており、2023年2月21日に出金が再開されました。報道によれば、再開から約1週間で5,400名以上に約96億9,000万円分の出金が処理されています。
ステーキングや貸暗号資産で預けた分も守られますか?
貸暗号資産は取引所に貸し出している扱いのため、分別管理の対象外です。破綻した場合は返ってこないおそれがあります。ステーキングの扱いは取引所やサービスごとに違うので、利用前に各社の説明を確認しましょう。
海外の取引所が倒産したら、日本の利用者はどうなりますか?
金融庁に登録していない海外取引所は、日本の分別管理や優先弁済権のルールが及びません。その国の破産手続きにしたがうことになり、資産が戻るまで長い時間がかかったり、一部しか戻らなかったりする可能性があります。
破綻が心配なら、仮想通貨は買わないほうがいいですか?
リスクをゼロにはできませんが、金融庁の登録業者を選び、口座を分け、余裕資金で取引すれば影響は小さくできます。仕組みを理解したうえで、少額から始めるのがおすすめです。
仮想通貨取引所の破綻と資産の守り方まとめ
仮想通貨(暗号資産)の取引所が破綻・倒産しても、国内の登録業者に預けた資産は分別管理によって会社の財産と分けられています。
日本円は信託、暗号資産は95%以上をコールドウォレットで管理し、ホットウォレット分には履行保証暗号資産を用意する決まりです。
2022年11月のFTX破綻でも、日本法人のFTX Japanの利用者は約3か月で出金できるようになりました。
一方で、貸暗号資産や海外の無登録業者に預けた資産は守られにくく、返還を待つ間の値下がりも補償されません。
これから取引を始めるなら、金融庁に登録された国内取引所を選び、口座を複数持って資産を分けて置くことから始めましょう。